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社長の債務免除と保証債務の履行
税務情報
2004.06.09
社長の債務免除と保証債務の履行
中小企業においては資金繰りに苦しむ中、社長からの借入金が増加する例が多くなっているようです。社長の役員報酬が支払えず、これを未払金、借入金に計上することにより債務がふくらむ傾向も見受けられます。社長に対する会社の債務は、増えることはあっても減ることはない実情を考えれば、いたずらに手を拱いているわけにいかないでしょう。
ここは思い切って、その債務を免除してもらうことを考慮すべきです。もっとも、債務免除額は会社にとって利益となりますが、会社は多分「繰越欠損金」をかかえているはずですから、これとの相殺により法人税を負担することにはならないでしょう。逆にいいますと、債務免除額と繰越欠損金との塩梅を上手にとることが、この場合のコツになるわけです。
■保証債務を履行した場合
中小企業における金融機関からの借入金については、社長が保証人になっているか、社長の財産が担保になっているか、が大体の相場になっているようです。そして、社長が所有する土地(あるいは担保となっている土地)を処分して、会社の債務を弁済する例−
保証債務の履行
−はそうめずらしいことではありません。
この場合、社長に土地の売却による所得税の問題が生じますが、立て替え払いした金額について会社が社長に返すことができない状況であれば、社長に所得税(及び住民税)はかからないという特例があります。
特例を受けるための判定はかなり厳しいものですが、下記をご参照ください。
<参照>
保証債務の特例における求償権の行使不能に係る税務上の取扱いについて
法令解釈通達より〜
(趣旨)
保証債務の求償権の行使不能における所得計算の特例規定(所得税法第64条第2項)は、保証債務を履行するために行われた個人保有資産の譲渡に係る所得について、求償権の行使が不能となった場合には、実質的な担税力が喪失することを勘案して設けられているものである。したがって、法人の経営が行き詰まったため、法人の代表者等が、その法人の債務に係る保証債務を履行した場合で、求償権を行使することができなくなるケースにも適用されることが想定される。
しかしながら、本特例が適用できるかどうかの判定については、法人が解散しない限り適用できないのではないかという認識が実務界にあることから、実態として当該規定の適用を見送る例があると承知しているところである。
昨今の企業倒産件数の増加等も踏まえ、当該規定の趣旨を十分実効あるものとするためには、代表者等が求償権を放棄することにより、法人の再建を目指す場合や、廃業に向かいつつもまだ法人が解散に至らない場合にも、本規定の適用があり得ることを明確にするとともに、その周知を図るために照会するものである。
I 求償権行使の能否判定の考え方
主たる債務者である法人の代表者等が、その法人の債務に係る保証債務を履行した場合において、所得税法第64条第2項におけるその代表者等の求償権行使の能否判定等は、次による。
1.求償権行使の能否判定は、他のケースと同様、所得税法基本通達51-11に準じて判定する(所得税法基本通達64-1)。このうち、同通達51-11(4)については、その法人がその求償権の放棄後も存続し、経営を継続している場合でも、次のすべての状況に該当すると認められるときは、その求償権は行使不能と判定される。
[1]その代表者等の求償権は、代表者等と金融機関等他の債権者との関係からみて、他の債権者の有する債権と同列に扱うことが困難である等の事情により、放棄せざるを得ない状況にあったと認められること。これは、法人の代表者等としての立場にかんがみれば、代表者等は、他の債権者との関係で求償権の放棄を求められることとなるが、法人を存続させるためにこれに応じるのは、経済的合理性を有する、との考え方に基づくものである。
[2]その法人は、求償権を放棄(債務免除)することによっても、なお債務超過の状況にあること。これは、求償権の行使ができないと認められる場合の判定に際しての考え方である。なお、その求償権放棄の後において、売上高の増加、債務額の減少等があった場合でも、この判定には影響しないことになる。
2.その法人が債務超過かどうかの判定に当たっては、土地等及び上場株式等の評価は時価ベースにより行う。なお、この債務超過には、短期間で相当の債務を負ったような場合も含まれる。
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